ID: 730124
輝かしい栄光の冷酷な裏側
icon NPC
レベル: 1
HP: 63
攻撃半径: 0m

Dialogs:



副題:バナハルのザンヌト物語


―この小説の内容はすべてフィクションであり、実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

1. ザンヌトとはどんな人物だったのか。

ザンヌトは、バナハル地区の権威ある名門の中でも数多く聖なる守護者を輩出した名のある家柄の子孫だった。

彼は生まれた瞬間から多くの人びとの祝福を受けた。裁縫の名人が最高級の材料で作ったやわらかいおくるみに包まれて幼い時を過ごした。

しゃべり始めるとすぐ多くの家庭教師がつき、彼を教育した。

そのような環境で成長したため、彼がディーヴァとして覚醒したのは難しいことでも、意外なことでもなかった。

多くのバナハルの子どもたちのように、ザンヌトは最も若く美しい時に覚醒し、羽の恩寵を受け取った。

彼は豊かに育った子どもらしく、寛大で暗い影がなかった。愛想がよく融通のきく性格だったため、周りの人びとに好かれた。

覚醒した直後、彼は社交界の生活を楽しんだ。整った顔とおしゃれな着こなし、優雅な話し方は人びとの好感を得るに十分だった。

他の家の若いディーヴァと付き合って踊りと楽器を習い、景色が良い場所へ遠足に行って風景画を描いたり、紳士的な運動競技を楽しんだりした。

しかし、彼はバナハルの優雅な生活には満足しなかったようだ。

パンデモニウムの華麗な街を歩きながら美しい少女たちと新しく発表された詩について討論したり、演奏会と宴会を楽しんだりする生活が嫌いだったわけではないが、より刺激的な何かが必要だった。

彼は自分に与えられた長々とした時間が退屈だった。

ザンヌトはふと頭を上げて上を見つめた。邸宅にずらりとかかっている光栄なる先祖の肖像画が目に入った。

それはパンデモニウムの要職に就いて魔界を左右する誇らしき家族の姿だった。

バナハル名家の息子として、誰もザンヌトに対して無礼に接することはなかったが、先祖と家族の存在感はいつも彼にのし掛かり、みじめな気分にさせた。

もちろん、いつかその席が自分のものになるということをザンヌトはよく分かっていた。

しかし、いつ?彼らも同じく永遠の命を持っているのに、自分の出番などいつ来るのだろうか。

2. ザンヌトはどうやって名誉と位置を得たのか。

ザンヌトはいつか受け継ぐ地位を待たず、自らの力で自分の位置を作ろうとした。彼はひたすら家門の命令に従ったり、その力に頼ったりしようとしなかった。

覚醒してしばらく時間が経つと、ザンヌトは他のバナハル出身のディーヴァがそうであるように、アルコンとして功績を上げるため戦場へ向かった。

ザンヌトが支援に向かったのはアビスのエレシュランタだった。

キベリスクが安定していて以前ほど危なくはなかったが、他のバナハル出身者がパンデモニウム近辺や安全な要塞での任務を選んだことと比較され、勇ましいという評判を得た。

戦いが激しくなるほどたくさんのキスクが必要だった。ザンヌトはキスクが金儲けになるという事実に気付いた。

彼はまだ完全ではないキスクの開発にたくさんのお金を投資した。神聖性に脅威となるという理由であまり良い待遇を受けていなかったキスク技術者を集め、研究に全力を尽くした。

魔族と天族の攻防は常に均衡し、キベリスクとキスクが存在するかぎり、戦勢が急激に片方に傾く恐れはなかった。

ザンヌトは終わりがないように見える戦いに使用するキスクをたくさん作り出せば良いのであった。

大儲けをしたザンヌトはブラック クラウド貿易団のシューゴと手を組んだ。

利潤追求という目的で意義投合したザンヌトとブラック クラウド貿易団は新しく開発したキスクを秘密裏に天族に売った。

このような過程を通して莫大な富を築いたザンヌトは、高い地位を占めている他のバナハルの人びとと一層親密な関係になった。

バナハルの人びとは、優雅な生活を維持するために一般的な魔族では想像もできないほど多くのギーナが必要だったからだ。

名誉と伝統を掲げる高慢なバナハルの人びとも、ギーナの力の前に堂々としてはいられなかった。

ザンヌトはアビスに参戦した経歴とキスクの開発により、先頭に立って模範を示したバナハル出身者という名声を得た。彼はアルコンの鑑として若いディーヴァの間で大きな人気を博していた。

公式の場や宴会に参加するとき、彼は感情の高潮した声で演説をしたりした。

「偉大なる魔族よ、あなたの命をパンデモニウムのために捧げてください。神のために喜んであなたの命を捧げてください。魔族と神のためにオードの流れへ還ることこそ真の永遠の命を得ることではないでしょうか」

そして、ザンヌトに導かれた多くの若いディーヴァが戦場へ向かった。

彼は自分を追従する軍勢を率いてエレシュランタの外、アビスの開拓にも力を注いだ。

開拓過程で数えきれないほど多くのキスクが使われたため、彼は莫大な富を築き、パンデモニウムの英雄としての立場を固めることができた。

3. 名誉を維持するためにザンヌトはどうしたのか。

ザンヌトは、自分の成功はすべて、バナハル出身であるという強力な背景が後押しとなったため可能だったという事実をよくわかっていた。

彼はバナハルに対する人びとの否定的な認識を破って人気を得たのだが、実は誰よりもその地位を維持するために努力した。

他の名家の令嬢と結婚して子どもがいたが、万一自分の子どもがディーヴァとして覚醒できない場合のことを心配した。

その心配は現実となり、彼が家門の最高実力者として立場を固めて100年が経ったが、彼の子どもの中には覚醒した者がいなかった。

自分を最後に家門のディーヴァ覚醒の足跡が途絶えでもすれば、どれほど大きな恥であろうか!

自分が生きているかぎり家門が絶えることはないだろうが、他の家門に笑われるはずだ。

ザンヌトは一所懸命努力した。たくさんの子どもが生まれたが、そのたくさんの子どもたちは老人になって死んでいった。

彼は生まれた子どもを大切にし、最高の環境で教育した。

しかし、青年期が経っても覚醒する兆しが見えないとパンデモニウムの外へ追い出して見向きもしなかった。

100年がさらに過ぎ、やっと娘1人がディーヴァとして覚醒した。

ザンヌトがその娘をどれほど大事にしたのかは言うまでもないだろう。

数多くの人びとがザンヌト最愛の娘、イドレインに気に入ってもらうために努力した。

しかし、ザンヌトはその娘すらも家門の勢力を育てる機械のように思っていた。

彼は厳しい基準で婿を探した。能力が優れた者でもバナハル出身でないと認めなかった。特に人間の親を持つものには見向きもしなかった。

娘を誘惑しようとした若いディーヴァは数知れず、彼らはザンヌトの力によって辺境の戦場へ送られたり、アビスで消滅したりした。

4. ザンヌトの冷酷な後ろ姿

イドレインが派手な花や宝石に取り込まれている一方で、不幸に陥った子どもがいた。

彼は青年期が過ぎても覚醒できず、パンデモニウムから追い出された。

追い出される前まではバナハルで楽な生活をしていたため、痩せて寒い辺境に適応することは厳しかった。

ろくに食べることも着ることもできないまま、彼は魔界のあちこちをさまよった。

ところが、不幸なのか幸いなのか、彼は死の境にいきなり覚醒した。

夢にまで描いていたディーヴァになったにもかかわらず、彼はパンデモニウムへ帰ることも、ディーヴァの祝福を受けることも拒否した。

彼の心の中には怒りと憎しみばかりがうずまいていた。自分を捨てた父とつらい状況に置かれた自分に顔を背けたバナハルの人びとに対する怒りを拭い去ることはできなかった。

ゆえに死にかけた自分を救い、自分の存在を認めてくれた人びとのもとへと去っていった。

個人的な情報網を通じて彼の行方を知ったザンヌトは、自らが率いていたディーヴァに極秘の指示を出した。

ザンヌトはレパル団に加入した息子を秘密裏に捕まえてくるように命令したのだ。ザンヌトの部下はレパル団のねじろを焦土と化すという大義名分のもと彼を捕まえてきた。

ザンヌトの子が遅く覚醒し、レパル団で活動しているという事実を隠ぺいしなければならなかったためだ。

彼は遅れて覚醒した自分の子に永遠の封印の呪いをかけた。そして、邸宅の地下牢獄に押し込めた。すでに数多くの子どもが閉じ込められているそこに。

「いっそ百人隊長でもさせてくれと尋ねてきたなら、辺境で平和に生きる道も与えられたろうに……お前は自ら墓穴を掘ってしまったな」

彼が最後に見たのは父の冷酷な声と後ろ姿だけだった。

―エピローグ

ザンヌトの話はここで終わりにしよう。

ここまで読んだあなたは、この物語を小説か何かのように受け取っているかもしれない。

しかし、時にはあなたの信じている事実が本当に真実なのかと疑ってみることも必要ではなかろうか。

耳を澄ませばバナハル地区の邸宅の地下から、誰かの悲鳴が聞こえてくるかもしれない。



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