ずいぶん時間がかかってしまいましたね。でも、あなたのおかげでアランとの接触に成功しました。

彼の目を見つめながら対話したんです。

アランの目からは確固たる信念のようなものを感じました。それはまさに長年の風雨に耐えた岩のようでした。

しかし、残念なことにその岩は風化しすぎています。彼の魂はすり減り、意識は壊れてゆがんでいるんです。

ゲロンが予想したとおり、アランは煉族のことを今もまだ気にかけていました。

しかし、それはぼくたち天族の進むべき方向とは全く相容れないものでした。
忘れられたヌビリム工房にある古ぼけた装置……そのことを気にかけているようでした。

詳しくはわからないけど、古代のすさまじい力が込められているようです。

アランはその装置を使って復讐しようとしています。

アイオン塔を崩壊させた者、シエル神を消滅させた者、そして……内紛にうつつをぬかして龍界に取り残された人びとのことなど顧みようとしなかった天族と魔族に対して。
彼の瞳に映っていたのは過去の恨みと憎悪だけです。

時と苦痛が賢者の魂を磨り減らし、足を踏みはずすことになってしまったのです。

残念ですが、彼の説得は断念するしかありませんね。光を失った魂に何を語りかけたところで馬耳東風です。

ゲロンには説得してみせると大口を叩いたけど、ダメなものはダメです。

ぼくたちが彼にしてやれる最期のはなむけ、それは長年の憎悪を絶ち切ってやることです。
ぼくだって、あの哀れなアランに手を下したくなんかありません。

説得を続けたいのはやまやまですが、天族に害をもたらすと判明したら処刑せよとの命令を受けている以上どうしようもないんです。

詳しくはわかりませんが、アランが手に入れようとしているヌビリムの品は非常に危険な物のようです。

ためらうことはありません。コラプト セージ アランをあの世に送ってやってください。

そうしたら、彼の形見になるような遺品を持ってきてください。あの悲劇の時代を激しく生き抜いた賢者はすでにこの世の者ではないことを煉族に伝えたいのです。
あまりにも簡単に考えすぎていたようです。

長年、人の心を読む仕事をしてきたというのに。

ええ、わかりますよ、長年の勘で。アランの心の闇がすでにこの世には存在していないということが。

彼を助ける方法は本当になかったのでしょうか。
力を貸してくれると言いましたよね？

もう彼の心と体はボロボロです。コラプト セージ アランをあの世に送ってやってください。

一刻も早く！

それから煉族に渡す遺品も忘れずに持ってきてくださいね。
なんで今回のことに首を突っ込んでしまったんだろうと思うんです。

私も、あなたもね。

でも、これでよかったんです。アランは煉族の賢者として永遠に語り継がれるでしょう。

あなたのおかげです。