(むせび泣きながら)私の話を聞いてくれますか、ディーヴァ様。

聞いてくれないなら、しょうがないですね。

夢で呪いますよ……。

うううっ……。
私にはパンデモニウムで待ってくれている婚約者がいます。

パンデモニウム大広場で清掃員として働く誠実な人です。

私がディーヴァになったからお互いの人生の長さが変わってしまいました。でも一緒にいる間は幸せにしてあげると、震える声でプロポーズをしてくれた愛しい人なんです。

でも彼を残して行かなければならないことがあまりに辛くて、未練がましくもこんな体になってしまいました……。
私が龍族と戦って消滅してしまったのは、どうしようもないことだと思います。私はディーヴァですし、龍族と戦う義務があります。私の実力が足りずにこうなったからには受け入れます。

でもヴェンボールのことを考えると、おとなしく目を閉じることができないのです。

任務を終えて帰ると約束したので待っているでしょう。もう帰れないのに……彼はきっと誰かが止めたとしても待ち続けているはずです。ただひたすら……。

これはヴェンボールがプロポーズの際にくれた箱です。この中には、彼がショックを受けるほどの恐ろしいものが入っています。中身を見れば、私を待つ気持ちなど吹き飛んでしまうでしょう。

この箱を彼に渡してくれませんか？
ありがとうございます。私の婚約者はパンデモニウム大広場にいる清掃員、ヴェンボールです。

箱から何かの音が鳴っても絶対に開けないでください。必ずヴェンボールが開けるようにお願いします……。

それと……彼が私のことを訊ねたら、私は他の素敵なディーヴァと出会って幸せに過ごしていると伝えてください。

恨んでくれれば、私のことを忘れたくなるはずです……。
ひどいわ……。

呪いますよ……。

うううっ……。
ひょっとして、道中でフィーナンシェというディーヴァを見かけませんでしたか？

歳は私と同じくらいですが、若くしてディーヴァになったので見た目は幼いですね。あ、その人が私の婚約者なんです。

純粋で優しい人だから、龍族を倒す任務を果たせるか心配していました。この間パンデモニウムを襲撃したドレドギオンを迎撃しに行ってから、姿を見ていないのです。

ちゃんと生きているのか、心配で眠れません。
これは私がフィーナンシェにプロポーズする時に渡した箱じゃないですか。これをなぜディーヴァ様がお持ちなのですか。

フィーナンシェに会ったのですか？どうでしたか？彼女は……元気なのですか？
(ヴェンボールが注意深く箱を開ける)

(突然デブリ3匹が箱から飛び出した)

(ヴェンボールは腰を抜かし箱を投げ捨てた)

ヒイイッ！デ、デブリ……！

キモチワリィ～！助けて、ディーヴァ様！
ハァハァ……驚きました。なぜこんなものが！

私が大嫌いなデブリを箱に入れて渡すなんて！いや、そんなことよりも……この箱は私がフィーナンシェに渡したものなんですよ……。

これをなぜディーヴァ様が持っているんですか？一体フィーナンシェはどうしたと言うのですか。
本当に他のディーヴァと出会ったのですね？本当に幸せになったのですね？

彼女はディーヴァだし私は人間なので、ずっと一緒にいれないことは知っています。私はいつか年老いて病にも冒されるだろうし、彼女が人生を共にするディーヴァに出会ったなら祝福してあげるべきですね。

でも、もしも彼女が帰ってこれないのだとしたら……いや！そんなはずはあり得ませんし、あってはいけません。

フィーナンシェは他のディーヴァと幸せに暮らしてるんでしょ？ディーヴァ様の言葉を信じます。

こんな遠くまで来てくださってありがとうございました。
そうだったのですね。彼女はもう戻れなくなってしまったのですね……。

私が言った通りでしょ。彼女は純粋で優しい人だって……自分が消滅したにもかかわらず、私を心配してディーヴァ様にこんなお願いまでするなんて。

本当に信じがたい話です。永遠の命を持つディーヴァが、私より先にアイオンの元に還るだなんて……。

こんなことになるなら、私も母の言いつけ通りに過酷な修練を経てディーヴァになればよかったです。そしたら彼女を守れたのに……。

彼女のこと教えてくださってありがとうございました。遠くからわざわざ来ていただいて本当に感謝しています。
残念なことだ……。

エレスギガル軍によって犠牲になったディーヴァを弔うためにも、龍族を倒し1人でも多くの命を救わなければならない。

それこそが、私がデモリション アロー派遣隊としてできる最低限の罪滅ぼしなのだ。

遠路はるばるご苦労だった。少し休んでくれ。