最近天界で崇拝者のことが噂になったせいで、煉族は龍族と手を結んだ種族だと誤解されているんです。

彼らが龍界に移ってきたのは時代の流れに逆らうことができなかったからです。煉族を龍族の仲間だと勘違いしている天界の風潮を改めなければなりません。

煉族の生きた証言が載っている証言集を作れば、煉族に対する誤解を正すことができるはずです。

サビヌスとゲロンは高齢で昔のことをよく覚えている煉族ですから、彼らの証言を収録するのがいいでしょうね。

プレーヤー様に彼らの証言を物語にしてトニスに届けてほしいのですが、どうでしょうか？
私たちは天族に望むことなど何ひとつない。

私たちが天族に親切にすれば、何か下心でもあるのではないかと警戒されるだけだ。

むしろ、私たち煉族のほうこそ別に天族などと親しくならなくてもいいと考えている。
そういうことであれば喜んで協力しよう。

煉族にとっても、龍族の肩を持っているなどという汚名は不名誉そのものだからな。

どうしてあのような噂が流れているのかわからないが、腹が立ってしょうがない！

この本が私の言葉をそのまま記録するというわけか…。

何を話せばいいのか、詳しく教えてくれ。
記録が残っていたり公に伝えられていることではないが、煉族は確かにシエルに仕える集団だった。

つまり、今のあなたたちと同じアトレイア人だったのだ。

昔シエルは私たちにシエル スピアという名前と任務を与えられた。

そして私たちが龍界に潜入して活動している最中に大崩壊が起きたのだ。

突如、龍界に残された仲間たち…ある者は死に、ある者は生き残った。
生き残った者たちは粘り強く龍界で暮らし、そしてインギスオンに定着した。

長い年月の間、私たちは数多くの試練に耐えてきた。それが煉族の原動力だったのだから…。

シエル スピアという名誉ある名前は忘れ去られたが、プライドを失ったわけではない。

天族の者たちよ、このことを覚えておいてほしい。

煉族はシエルが率いた最初のエリート軍団であり、龍界で生き残った誇りある種族だということを。
何の用だ？

遠い過去から積み上げてきた数え切れないほどの記憶の中に魂が消えていきそうな私に、どうして静かな時間を送らせてくれないのか。

遠い過去の記憶は目を閉じれば鮮やかに思い出せるが、われわれの姿は今こんなにもみすぼらしい。その違いに涙がこぼれる。
無知な天族よ、われわれが龍族と命を懸けて孤独な戦いを繰り広げていたとき、あなたたちはアトレイアを失ったのだ。

シエル スピアという栄光ある名の下でわれわれが龍界で戦っていたとき、シエルは結界の中にいらした。

シエルを待ちながら戦った仲間たち。ある者は死に、ある者は生き残った。

見事な討ち死にを遂げながらも、アトレイアの未来を憂いた魂たちよ！

われわれが龍族と戦わなければ大勢の龍族兵が結界内に入ってきたはずだ。われわれはアトレイアを守るために必死だったのだ。
天族よ、天界と魔界が存在する前に人間がいたということを忘れてはならん。

武器を握り互いの身を削って戦う姿は悲劇だということを知っている最後の種族、それがわれわれ煉族。

あなたたちは知らないのか、遠い過去から流れるアトレイアの涙を。

われわれがインギスオンで生き延び暮らしていくうちに、遠い過去となったアトレイアの存在は忘られつつある。

覚えておけ…煉族がアトレイアのために、龍族の手にかかって死んでいった時代を。
わしが書庫の司書だということを知っておったのか？

(本にくまなく目を通す)

いい本じゃ。このような本であれば図書館に置いても大丈夫じゃろう。煉族に対する過剰な反感を煽る誤った情報が流れているから、ちょうどよいかもしれん。

インギスオンに来たのが無駄骨になるのではないかと心配していたが、これで満足じゃ。感謝するぞ。