ID: 748011
踊る子供たち
icon NPC
レベル: 1
HP: 63
攻撃半径: 0m
Dialogs:

むかしばなし集



第6巻 踊る子供たち



昔むかし、光と大きな音とともに天が砕けました。

邪悪な龍族のせいで、アイオン塔が壊されたのです。

砕けた空の隙間から、氷のように冷たい風と熱い炎が入ってきました。

大地に植えた作物はすべて干からび、家畜はやせ細っていきました。

生き残った人びとはみんな、飢えていきました。

ホスが暮らしていた小さな村も同じでした。

村の大人たちは朝早くから夜遅くまで、山や野原をさまよって食べ物を見つけてこなければなりませんでした。

大人たちが仕事に出ている間、子どもたちは丘でたき火をし、そのそばに座って時間をつぶしていました。

ホスもその子どもたちの中の1人でした。

野へ出かけるお母さんはホスにいつもこう言いました。

「絶対に踊りを踊ってはいけませんよ」

たき火の前に座った子どもたちは、あまい香りの果物をかじったり、とろけそうな食べ物をお腹いっぱい食べる姿を想像していました。

大人たちが1日中仕事をしても、1日に1食を食べられるかどうかの生活だったのです。

子どもたちは、日に日にやせ細っていきました。

そして、おいしい食事を想像することにも飽きました。



あるとき、1人の子が立ち上がり、踊り始めたのです。

他の子も立ち上がって一緒に踊りました。

みんなが踊り出したのです。

でも、たった1人、ホスだけはたき火の前で静かに座っていました。

子どもたちはホスに言いました。

「ホスもこっちにおいでよ。踊ったら気がまぎれるよ」

しかし、ホスは首を横に振りました。

子どもたちはホスを放っておいて踊りました。

踊っている間は、空腹を忘れることができるからです。

そして子どもたちは毎日踊り、どんどんやせていきました。



北風が強く吹く日も、子どもたちは熱心に踊っていました。

丘に強い突風が吹きました。

子どもたちは鳥の羽根のように吹き上げられ、風に乗って消えてしまいました。ホスだけが残ったまま。

そして、二度と帰ってくることはありませんでした。


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