凝縮されたアンティモニを売ったら、どれくらいもらえるのかしら？

お金のこともそうだけれど、アンティモニは本土で鉱物を研究するディーヴァなら誰もが欲しがる鉱物なのよ。龍界まできてこんなに大量のアンティモニを手に入れたと知れたら、すべての鉱物のディーヴァが羨ましがるでしょうね。

そういえば思い出した。ベルスランのホルーのことよ。鉱物を研究するディーヴァなんだけど、私がゲルクマルスに行くことになった時に大反対した友達なの。

ゲルクマルスにある鉱物は使い物にならないものばかりだよって。
彼がこの凝縮されたアンティモニを見たら何と言うかしら？

ホルーは鉱物の使い道を探ることにかけてはすばらしい才能の持ち主なのよ。それにクリエイティブだしね。鉱物を、その特性が最大限に活かせる用途で開発する分野においては第一人者なのよ。

この凝縮されたアンティモニのことでアドバイスもほしいし、ホルーに自慢もしたいから、ベルスランに行ってきてもらえないかしら？
以前は放浪してたんだけど、ベルスランの要塞を復旧する仕事に興味を持ったのか、最近はずっとあそこにいるの。

ホルーにこの鉱物袋を渡して、私がゲルクマルスでどれだけがんばってるか伝えてちょうだい。

凝縮されたアンティモニを見たら、きっとビックリするわよ。
ゲルクマルスの存在が知れ渡って、新しい生物や鉱物を求めて多くのディーヴァが集まりました。

私もはやる胸をおさえながらゲルクマルスに行ったもんです。

ところが、オードのエネルギーが不安定な龍界にある物質のほとんどは、汚染されてて使い物にはならなかったんですな。

ほとんどすべてがね。それでゲルクマルスへの興味がなくなったんです。
カラベルか。あいつ、あいかわらず元気かい？彼女は意地っ張りだから、人の言うことには耳を貸さないんだよなあ。ゲルクマルスの鉱物には価値がないからと散々止めたのに。

この鉱物は凝縮されたんじゃなくて、龍界の植生によって変異を起こしただけじゃありませんかな？

ここの鉱物試験石を使って確認すればすぐにわかることなのに、なんで基本的な知識も身につけず、アピールすることばっかり考えてしまうのかねぇ。

それじゃ、この鉱物試験石をどうぞ。カラベルに渡してやってくだされ。

これは凝縮されたアンティモニじゃなくて、変異したアンティモニだと言い添えてくだされ。
ベルスランから戻ったのね？ホルーがどんな表情をしたか目に浮かぶようだわ。

嫉妬の炎を燃え上がらせてなかった？いつも私のことけなしてたもの。きっと私のこと、妬んでるのよ。

ゲルクマルスに行くって言った時も、あんな望みのないところになんで行くんだって私のこと鼻で笑ったんだから。

でも、立場は逆転したはずよ。凝縮されたアンティモニを見たんだものね、アハハハハ。
(試験石でアンティモニを確認すると、みるみる顔を赤らめた)

そ……そんな……そんなはずないわ……。

アンティモニが何かの理由でちょっと変異しただけよ。使えなくはないはずよ。

もう一度研究してみる。きっと何かの間違いに違いないわ。そうよ。そうに決まってる。

ああ、これはベルスランまで行ってきてくれたお礼よ。受け取って。