人間にとって、夫婦仲良く共白髪になることは大きな幸せですぞ。

つまり、わしはとても幸せ者じゃということです。

家内のヘリオネと今まで仲良く過ごしてきたのですから。

それに2人とも病気などとは無縁。これ以上何かを望んでは欲張りというものですな。
夫は老いるとますます妻に感謝するものですぞ。

若い時分には照れくさくてできなかったことの1つや2つくらい妻にしてやろうじゃないか、と考えはじめる。

若いときは料理なんぞ一度も作ったことがないせいですかのう。こうして歳を取るとどうして、ひどく申し訳ない気持ちになってしまうのです。

今からでも遅くないから、死ぬ前に一度くらいヘリオネが好きな料理を作ってあげたいですなあ。
ヘリオネが一番好きな料理はウィンケル蒸しですが、作るとなると1つ問題が……。

村の前にある水辺に行けばウィンケルは掃いて捨てるほどあるというのに、ファイニーとアンキロトールがたくさんいるので取りに行けぬのです。

若い時分であればすばやく身をかわすこともできたのに、今はこのように歳老いた身。そう簡単にはいきませんからのう。

ディーヴァ様が助けてくれれば、ウィンケル蒸しが作れそうですが……手を貸してはくれませぬか？
村を出て水辺に向かうとウィンケルがたくさん転がっています。

蒸し料理にするので、できればたくさん欲しいですなあ。

こんなことを言うのは気が引けますが、他の材料が腐ると困るので、なるべく早めに頼みますぞ。

では、わしはディーヴァ様を信じて待つことにしましょう。
おやおや、戻ってきましたな。

野菜の準備も終わり、タレも用意できたところです。

生まれて初めての料理ゆえ、何もかもがそりゃあ大変な作業でしたぞ。

ところで、ウィンケルは持ってきてくれましたかのう？
他の仕事で忙しいということはわかっていますぞ。

インタルディカ中のディーヴァがラスベルグとアンデッドの問題を解決するためにがんばっている姿をわしも毎日見ていますから。

しかし、お願いしたのが年寄りだということも考えてくだされ。

ディーヴァ様がウィンケルを持ってくる前に、わしや家内が死んでしまったら何の役にも立ちませんからのう。
おおっ、これはとても新鮮な物を持ってきてくれたようですな。

ありがとう、本当にありがとうございます。

ヘリオネがこれで作ったウィンケル蒸しを食べ、今まで抱いていた寂しい思いをすべて忘れてくれればいいのですが。

ディーヴァ様のおかげで、わしも晩年になってやっと家内によくしてやれますわ。