もしかして、インギスオン要塞に行ってきたのか？

それなら、そこに派遣されていたメサリナっていうガーディアンに会ったんじゃないのか？

知っているか？そのメサリナという女性はこの間偶然紹介してもらったんだが、とても興味深い女性だった。

なんというか、とても変わった魅力があるんだ。
今までたくさんの女性と付き合ってきたが、あんなに冷静な女性は初めてだ。

礼儀とは無縁なのか、形式的な挨拶だけしたらそれっきり、俺のほうなんて見向きもしなかった。

それだけじゃない。このテルシテス様が冗談を言っても笑わなかったんだぜ。かなり長いこと話をしたけど、フッと鼻先で笑ったのが1回だけ。

そのときは「なんて女なんだ」と思ったが、それ以来、彼女のことがずっと頭から離れないんだ。

ま、大したことじゃないが、どうやら悪い病気が出ちまったようだ。このテルシテス様の前でどれだけ突っ張っていられるのか確認してみたいっていう病気が、ね。
まぁ、たまにはそんな女性もいる。

何が好きなのか、何が嫌いなのかよくわからない女性ってのが1人や2人はいるもんだ。

だがな、実はそんな女性のほうがずっとずっと怖いのさ。ひとたび燃えあがると消えることを知らないからな。

とにかく、メサリナにはできる限りのことをやってみようかと思っているのさ。

それでなんだが、インギスオン要塞に行ってメサリナに伝えてくれないか？最近ちょっと暇になった俺が会いたがっているよ、ってね。
よかった。

だがな、伝言を伝えるときはちょっと気をつけてくれよ。

あくまでも俺は、ちょっと暇になったせいであの子のことを思い出した。それで、前に会ったとき途中で終わっていた話を続けたいと思った……と、まぁこんな感じでね。

わかったろ？あんたもこれぐらいは覚えておいたほうがいいぜ。これから必要になる時が来るかもしれないんだから。

誰っていいました？テルシテス？

私、覚えていませんね、そんな名前。

どこで私に会ったって言っていたんですか？
あぁ、思い出しました。

うわついた感じの人ですよね、そうでしょう？

つまらない話を延々とするもんだから、もうどうしようかと思ってたんです。

まったく、本当につまらない人なんですね。わざわざ誰かに頼んでまで、そんなことを言ってくるなんて。

見てのとおり私は勤務中なので持ち場を離れられません。本当に会いたいのであればご自分が来たらどうですか、と伝えてください。
俺にインギスオン要塞まで来いだって？

まったく信じられないな！

いったい彼女の自信はどこから湧いてくるんだろう？

せっかくやさしくしてやろうと思ったのに、身の程を知らない女だな。

で、あの小さな口で他にも何か言っていたのか？詳しく話してくれよ。
う～ん……それなら怒るようなことでもないかな。

女性ってのは、本音とはまったく違うことをよく口にするもんさ。

あんたは気づかなかったかもしれないが、メサリナの反応には不自然なところがある。あえて俺の名前も知らないフリをしたことも怪しい。

おまけに、要塞に来いって言ったんだろう？つまり、実はこの俺に会いたいって意味なんじゃないのか？

ふはははっ！それならここで諦めるのはまだ早いな。