最初はこの旅館に長居する気なんかなかったさ。

知ってのとおり、俺は狩人だ。1か所に長く留まっていたら何も進まねぇ。

なのに、この旅館のシェフのギョーザが俺の足を止めたんだ。

よそでは一度も味わったことのねぇ驚くべき味、ここを離れることなんざ、しばらく想像もつかなかったね。
そんな中でジャマノークに出会ったんだ。彼女は俺の理想のタイプだ。

魅惑的なのに軽薄じゃあない洗練されたスタイル。おまけに、あの身のこなしと言葉遣い……すべてが完璧なタイプなんだ。

これで、俺がどうしてこの旅館を離れられねぇかわかっただろ？

そのとおり！俺は恋に落ちたってわけさ。
だが、ジャマノークは気難しい女だと思うぜ。

俺も女のことには疎くねぇほうだ。ジャマノークのような女には気難しいタイプが多いのさ。

だから、うかつに近づくことができねぇ。何をしてやりゃあ喜ぶのかもわからん。

その上、最近は特に機嫌が悪そうに見えんだが、あんたが理由を聞きに行ってくんねぇか？
ありがとな。なぜか、あんたならジャマノークが気を許しそうな気がするんだ。

女どもはあんたのような人に何でも話すようにできているのさ。

最近、何が不満なのか、何か悪いことでもあったのか、聞いてみてくれ。
どこかでお腹を空かせているんじゃないかしら……。

いえ、むしろ変なものを食べてお腹を壊しているのかも。

ああ、懐かしいビソン。
私のペットのドレイキです。

しばらく前に、首輪を引きちぎって逃げてしまいました。

いつも暖かい寝床と美味しい料理を用意してあげたのに、何が不満だったのでしょう？

考えれば考えるほど悲しくなります。いつもモルーラ洞窟まで散歩に連れていってあげたのに……。

もしも小さい緑色のドレイキを発見したら、私のところに連れてきてください。
ジャマノークには会ってみたか？まだご機嫌斜めな顔をしていたのか？

失恋でもしたのか？それなら絶好の機会じゃねぇか！

女ってもんは、恋に敗れるとさらに恋に陥りやすくなるもんさ。

これを機に、彼女に告白ちまってもいいかな。
何ぃ、ペットのドレイキぃ？ジャマノークが溺愛するペットだって？

だが、自分から逃げ出したドレイキが、そう簡単に見つかるだろうか？

モルーラ洞窟に散歩に行っていたって？それなら、その辺にいるだろうからそこに毒でもまくか？

いや、だめだ。生きたまま捕まえてこそジャマノークが喜ぶだろう。

いい情報をくれてありがとよ。